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Expressionの特徴 メリット、他の機能との違いの解説です。
A.E.にはExpression(エクスプレッション)という機能があります。5.0から導入、5.5で拡張されました。
エフェクト、トランスフォーム等のタイムライン上で設定できる項目の多くをスクリプトによって制御するもので、これにより、動作タミング等の微調整が簡便になり、かつ正確な配置が可能になるので、破綻の無い、こだわりのある映像が作りやすくなります。
例えば、ドロップシャドーを適用したレイヤーの回転に、ドロップシャドーの方向をリンクすると、レイヤーの回転とドロップシャドーの角度が同期します。これによって、よりリアリティの高い画面を作ることができます。
Expressionは、ウェブブラウザで標準的に使われているJavaScriptを元に作られたスクリプトなので、既存のノウハウの転用が可能です。実践的な入門者向けのテキストも、ネット上、書籍で多数手に入れることができます。また、Adobe FlashのアクションスクリプトもJavaScriptを元に作られていて、グラフィカルな処理のために用いられている例が多いので、参考になるでしょう。
Expressionでできること
- キーフレームを打たずに、正確な値を与えることができる。また、後からの調整がしやすい。
→音楽とのタイミング調整が楽
→複数のオブジェクトを扱う場合でも、全体の統一感を損ねない調整が楽
- タイムライン上でレイヤーに対して値を入力して設定できるほぼ全ての機能を扱える。
- 同じレイヤーの異なる項目を関連づけたり(例*1)、複数のレイヤーの項目でリンクしあったり(例*2)、異なるコンポジション上の数値に対しても(例*3)、影響を与えることができる。
→慣れてくれば、100以上のレイヤー数でも、問題なく扱える。
- キーフレームを打った項目に、その変化を維持したまま、Expressionを追加でる(ただし、Expression設定後のキーフレームの調整には煩雑な作業が必要)。
例*1)ドロップシャドーの方向と回転をリンクして、常に画面の下に影を出す。
例*2)2つの歯車の回転をリンクして、かみ合った回転を作る。
例*3)プリコンポーズした後に、リンクさせて、タイミングを合わせる。
Expressionでできないこと、扱いにくいこと
- マスクの頂点の座標は数値で制御できないので、形を変えることができない。
- 式の保存、適用が一括して行えないので、手作業でひとつひとつコピー&ペーストしないといけない。
- Expressionを設定した項目に、キーフレームを打って追加調整しにくい。
- キーフレームを使わずに、数式、スクリプトを使うので、使い方をマスターしないといけない。
- 数式やスクリプトを使うので、感覚的な思考から断絶される場合がある。
- キーフレームによる制御とExpressionによる制御を同じ値に対して設定する場合、作業が煩雑になる。
キーフレームとExpressionの比較
- キーフレームによる制御の場合の方が、即興性のある、感覚的な設定ができる。
→再現性が低い場合、別な項目への同期が困難
- Expressionの場合、式によって正確な値を与えられるが、設定時に理論的な思考を要求される。
→式であらわしにくいものには向かない
他の環境でも使えるので安心
共同作業やネットワークレンダリングなど、異なる環境でプロジェクトファイルを開く時にも安心。サードパーティー製のプラグインを用いた場合、それらをサポートしていない環境では、折角の設定が無効になるが、Expressionは同じバージョン以降のA.E.であれば問題ない。
ペアレントとの違い
ペアレンとでは、子が親の一部であるかのように、親の位置、スケール、回転を同時に、子に伝えるが、Expressionでは、それぞれ独立して、変化をつけて伝えることができる。例えば、逆回転、異なる項目に影響、エフェクトとのリンクなど。 ペアレントの有用性としては、複数のレイヤーを一体として変化させやすいという点、操作画面上での一覧性の高さという点があり、Expressionとは異なる特徴を持つ。
モーション計算との違い
値を式を使って制御するという意味では、ほぼ同じ機能。一部、モーション計算のみの機能がある。 モーション計算は式をキーフレームとして、レイヤーに反映させるが、Expressionは式のままで、キーフレームは打たない(キーフレーム化することも可能)。Expressionの方が、一度設定した後の調整が楽なので、ブラシュアップ、修正しやすい。 モーション計算はプロ版だけの機能ですが、Expressionはスタンダード版でも利用できる。
A.E.の設定において、常にExpressionが優れているわけではないので、特徴をふまえながら、効果的な使い方を選択する必要があります。Expressionの式の書き方よりも、こちらの方が難しいかもしれません。A.E.の操作自体に不馴れな場合は、あまり深入りをしないの方が無難だと思われます。
A.E.の操作には既に十分に慣れている人なら、Expressionによって、表現力を高めることができます。